その587

 一切皆無それ自体はあるのか?という問い方はしっくりとこない。一切皆無はあってはならない。あるというのは存在するということであり、存在する一切皆無とは、存在する側からの認識となる。存在する側からの認識としての一切皆無には大いなる矛盾がある。一切皆無であるにも関わらず、あるかないかを問うことはできない。一切皆無それ自体を認識できる主体は実在しない。なぜなら、一切皆無となった世界には一切の主体がなく、何かがなくなっただけなのか、一切が完全になくなったのか、まるで認識できないからだ。一切皆無は永遠に証明のしようのない世界のあり様だ。