その630

 すべての発明や発見はすでに世界にあるものであり、すでに実在しているから、たとえば、数式などもそのような姿で実在可能なのだ。それがどれほどのものであっても、実在するかしないかは、世界それ自体がそのようにあるか否かであり、世界の姿の一部を言語や数式に置き換え可能であるその意味とは何か。我々に属する認識機能を通じた認識のための道具としての言葉や数式はなぜ世界のありように沿っているのか。あるいはなぜ、世界を言葉や数式で切り取っても成立するのか。世界は複雑な関係性にある。複雑な関係性にある世界の部分を切り取っても、その切り取った部分がそれ自体として成立するのは、切り取って世界から乖離させたことを意味するのではなく、切り取られた認識はそれでも世界と関係を保ったまま実在しているから、認識として成立するのではないか。