その628

 我々に理解可能なのはすべてが理論上の話であって、理論として成立しないものをどのように捉え、実質的なありようとして受け入れることができるだろうか。ただそのようにあるそのことをそのまま受け入れることならできるが、それはだたそのようにあることを前にしているからだ。どこか遠く、時間的な隔たりがある状況について、理論として成立しないものを認識できるのだろうか。あるいは、単なる直感として浮かんだことを、そのまま事実として受け入れるために、理論以外のことはないのか。仮にそうだとすれば、理論そのもののあり方の精緻化や拡張などを行い、つまり高度化していくしかない。実際にそれは数学の世界で起こっている。いかに世界があるかを高度化を増していきながら丹念に理論で紐解いていくしかないとき、我々の紡ぐ理論と世界それ自体の自然はどのような関係にあるのだろうか。あるいは、すべての理論もまた自然の流れのうちにあるのではないか。数式のいずれもが自然の流れのうちに出来上がっていくのではないか。