その586

  りんごがある。そのりんごがその周囲と完全に無関係であることはあり得るか。無関係であるなら、そのりんごはそれ自体として孤立してあるが、そういった状況にある何かがあるとは考え難い。何かがどこかにあればそれはつねに絶対的にその周囲との関係にある。あるいは、関係性の波が遥かなる時空を超えてやってくるかもしれない。今ここにある何かには今ここにない何かの影響がある。ある過去に起こったことがいまここにおいて関係しているとき、その関係は今現在における同時的な現象ではない。過去Aと現在Aが同時に起こることには矛盾がある。過去Aは過去に起こった。現在Aは現在において起こっている。現在Aの原因が過去Aにあるとき、現在Aと過去Aはつながっている。つながっているが、過去Aはもはやどこにもない。この世界のどこにもないものが現在Aの原因となっている。存在は常に今現在にあるが、その原因が遥かなる過去にあるとき、今現在においてあるものの原因は過去のすべてである。それは世界が無限ではなく、有限であり、始まりが明白にあったならということとなる。世界に始まりがあったかどうかは、実際にあったかどうか。それまで何もなかったがそこに何かがあるようになったなら世界には始まりがあったことになる。この世界にはつねに何かがあったのか。それとも、何もなくて、あるときいきなり何かがあるようになったのか。