その564

 何もない、そのなさが原因となって、何かが生じること。それは常に起こっているのではないか。有は常にその背後に無がある。何かしらの無があり、それ故に有にはその先がある。であれば、無は有の原因だが、エネルギーである有の原因の無もまたエネルギーなのか。無がエネルギーであれば無ではない。無が無であるためには無でなければならない。その意味は存在するすべての現象の否定である。有として実在する現象のすべてが起こることのない何か。それをさしあたり無とするなら、有として起こることがないことの他、無では何かが起こっていると考えられる。それでは無ではない。無では何も起こらない。何かが起こっては無ではない。無とはつまり何も起こらない現象のことだ。あくまでも現象だ。何かが起こる世界にとっての無とは何も起こらないことを意味する。