その565

 無とは有にとっての無となる。なぜなら、言語化しようとするなら、それはつまり有の側からの論理となる他はない。そのとき無とは、何かが起こっている世界に対して、無も起こっていないことを意味する。何も起こっていない、そうした現象が起こっている。何かしらが起こっている世界に何も起こっていない場があるとき、その場を無とすることができる。いや、無が場であってはならない。何も起こることがないのだから、場といった現象もまた起こっていない。本当に何も起こっていないのだから、そこには何一つない。何かがあれば、何かが起こっている。何もなければ、何も起こっていない。