その597

 事それ自体が実際に物質としてあるのかどうか。物はあるが、物が変化していくのは事によるとしても、事それ自体が単独で実在するのかどうか。たとえば、風が吹く事それ自体は実在するのかどうか。確かに風邪は吹いている。それであれば風が吹くことは実在し、事それ自体が実在することを意味する。しかし、風が吹くことは我々の精神のうちがにおいて独立した現象なのではないか。いや、風が吹いているとき、純粋にそこでは風が吹いている。風が吹くといった現象がりんごが一個あるように起こっているのではないか。個体としてのりんごと風が吹くことは同一の地平にあるのではないか。個体を通じていこっている現象か、気体を通じて起こっている現象かの違いがあるのみで、りんごもそれがものとしてあるとしてもこととしてあるともいえまいか。