たとえば、一個のりんごがある。そのりんごはりんごであるといったことにおいて完全だ。それは認識内にある一つのこととしては完結しているといった意味で完全だということだ。りんごは認識内にあるのではない。ただそれはある。認識されようがされまいが関係はない。りんごはものであり、ことではない。しかし、ものであるりんごの原因にはことがある。ことともの。ものはことでできているが、こととは起こったこと、起こることのことであり、意味といってもいいのか。意味があるから何かがあり、りんごと関係する意味があるからりんごがある。りんごと関係する意味はりんごの実在のためのこと。しかし、いくらことを集めても、ものにはならない。いや、いろんなことが起こっているその状況をものの側において考えるべきではないか。ものの側における変化はことに置き換えられるが、それは我々が認識を行おうとするからだ。認識内にものはない。ことだけがある。認識内で認識されるのはものだが、その認識の結果はこととなる。
