その568

 価値の優劣はそのすべてが認識内における現象だ。意識をもつあらゆる実在がその認識を行うときに、価値の高い何かとそうでない何かに選別する。選別されることで価値が発生する。何かの現象にとって価値がないようなものも、何かの現象にとっては価値がある。単に、ある現象における必要な因子かどうか。存在するすべてのものがある現象に必要なのではない。ある現象が縁起するためには限られた何かがいる。限られる必要があるのであって、そうした閉ざそうとする力によって何かが現象として発生する。現象として発生し、その維持のためには、存在するすべてのうちで価値の優劣がつく。必要かそうでないか。むろん、必要でない何かは他の現象にとっては必要な可能性がある。何か具体的なものがあるためには、何か具体的な価値をもつ因子がいる。しかし、何か具体的なものではなく、兎にも角にも、存在するものがすべてそのようにあるためには様々な関連のうちに価値の優劣があっても、ただひたすらにあるものがあるようにあるためには価値などはない。優劣なくある。いかにあろうとあるものはある。ありさえすればいいのであり、存在それ自体に優劣はない。ある存在は優れていて、ある存在は劣っている。それは何かの認識内において生じる現象に過ぎない。何かがいかにあろうと優れてるも劣っているもない。認識をとっぱらえば、価値はその同一性にある。価値同一性はしかし、意識をもつことのない実在のみがある世界において通用する概念だ。何かがその存続のためにさまざまな価値をもつ因子を求めているとき、否応なしに価値が発生する。