その372

 ありはしないものでも、言葉になれば、それは存在の一員となる。まったくどこにもなく、言葉にもなっていないものはないのかもしれない。ないけれど言葉になるものはあるものをもとにできあがる。言葉にもなっていなくて、どこにもないものが存在する何かの原因になることはあるのか。無から何かが生まれることはあるのか。存在の仲間としての無は有をもとに、その実在がイメージされる。あらゆる存在の影に無がある。ないと考えられていた何かそれは無だが、次の瞬間にあるかもしれない。それが連続的に起こっているとき、無であった何かが次の瞬間には有として実在する可能性がある。あるいは、永遠に無である何かがある。どれほどの時間を費やしても実在し得ない何か。そんなものがあるのかもしれない。きっとある。しかし、それが何かはまったくわからない。