その590

 何かがある。あるもののうちで相互に非接触的な何か、つまり、無関係である何か。同一の世界にあったとしても、同一の世界にあることで即座にそれらすべてが関係し合っているかどうか。すべてがすべて関係し合っているなら、何も動かない。関係するといった意味とはつまり、繋がることであり、繋がってしまえば、そのつながった状況は、個別にそれ自体として実在する。関連し合ったとき、関連し合っていない何かが同時にこの世界にある。関連しあっている実体がさらなる関連を紡ぐようにして動くが、同時に、関連し合っている状況が常に関連し合っているわけではない。関連し合っている状況はそれ自体が動的なのであり、関連し合うようにだけ運動しているのではない。関連し合っているものはさらなる関連を求めていくが、同時に関連を失っていく。ある瞬間において、何かの関連性にはその増減がある。関連を失うことも関係性だ。関係のなさもまた関係性だ。関係がないことがこの世界で起こっていることの意味が関係性のうちにある。