その466

 見えているものがそのように見えていることとは、ひとつの情報だが、それがそのような実在であるといった決定的な事実を示すのではない。そのものが単にそう見えているに過ぎない。他の認識主体からしたら、他の見え方が実在することになり、それはそれで事実である。いっこのりんごに幾つもの見え方があり、そのうちのどれが本当かと問うてみても、仕方はない。絶対的なその姿は実在しない。移ろいゆく一刻一刻のすべての事実が宿っている。流れのすべてにおけるどんな瞬間もそれがそのようにあることに真実がある。流れのうちからどこかの瞬間を取り出してそれが真実だと言うわけにはいかない。