その455

 何かが目の前にあって、その何を知っていて、何を知らないのか、そのこと自体を知ることは難しい。知っていることは知っているが、知らないことは知らないわけだが、何を知らないかを知っていることをもとに明らかにすることはできるが、それにも限界がある。知らないことの領域について、まだわかっていないことの概略が知られている場合と、何を知っていないか、そのことそれ自体が何なのか、まるで分からない場合がある。たとえば、一個のりんごのなかにある未知の領域について、そのような領域があることを可能性として知っていても、具体的にそれがどんなことなのか、明らかである場合と、一切何も知らない場合がある。それでもなぜ事実が事実として成立するのか。それ自体としてなぜ成立して、そのようなことが起こりうるのか。そう起こったことを表す表現の外にも、その事象と関係のあることがあるかもしれないのに、その関係とは無関係になぜ、何かがそう表現され、成立するのか。