その382

 りんごが何なのか、根源的には知っていないはずだが、りんごは確かに実在するし、見れば、それがりんごだとはわかる。かじればりんごの味がする。味だけがりんごの実態ではない。りんごとは何か。その問いに答えうることはできない。こういう特性がりんごにはある。そういった説明ならできる。しかし、それらを述べれば、それでりんごを説明したことになるのか。りんごはその全体として実在しているが、その全体について、どこまで調べ尽くせばいいのか、まったく分からない。全体があることのイメージはあっても、それがどこまで広がっているのかがわからない。その判断の支えになる何かがあるとは考えられない。すべてがすべてであるとき、なぜそれがすべてなのか。