その362

 知らないことがあることをして自然とし、かつ、知り尽くせない。それが一個のりんごであっても、そのなんたるかは知り尽くせない、その不可能性をもって自然と呼ぶこととは何か。その全体を知ることで初めて、それ自体を知ったことになるとき、知識はその全体を持つことなく、その部分として実在するのみでしかないのではないか。

部分的に知られたものとは、とあるりんごにある要素が込められていることを意味する。個別の単純な要素を知っただけでは、りんごを知ったことにならないのはいうまでもない。知っているとは何か。つねに存在の部分のみを知っているのではないか。部分のみを知っていることが知っていることを意味する一方で、知らないことがその背後にあるとき、知っていることは知らないこととも関係している。関係があるはずなのに、知っていることのもとになった実在について知らないにも関わらず、何かを知っているとはどういった現象か。