その292

 自然ではないことが起こっているのか。起こっているなら、それは完全に自然ではないのか。自然ではない何かがどのようにして実在可能か。存在はそれが何であっても即自然ではないか。人間が生み出した現象はその始まりが自然であり、その帰結もまた自然ではないか。自然から始まったものが自然ではなくなる現象が実在するのか。いつ自然でなくなるのか。人間が湯がいた卵は自然ではないのか。人の手が加えられ加工されたものが自然ではないというのであれば、人は自然であるためには何もできない。人間が何かをすれば表層的には自然が加工されたようになるが、加工された自然は自然ではないのか。加工とは何か。手を加えるとは何か。人間のいない地球で起こっていることには人間の手が加わることはないが、何かがそう起こることには他からの影響がある。何かが起こっていること自体が他へと影響を与えることになる。つまり、そのものは加工されるし、何かの加工をする原因にもなる。考えて意図的になされたことがある。それは、自然の現象ではないか。動物や昆虫や植物であっても考えて意図的な働きかけを自らの外部に向かって行っている。何かを加工している。加えて、工(たく)んでいる。それは意識的になされている。単純にいえば、変化が与えられているのである。変化を与え合っているのである。それがいかなる機構にあっても、そしていかなる結果を迎えたとしても、自然のなりゆきではないか。であれば、何が起こっていようと自然の現象として起こっていると考える他はない。