その282

 個物としての関係性がある。個物とは関係性のことである。関係性のあり方がその個物のあり方を決める。個物がその関係性を持つことなく実在することはない。一個の個物があるように、一個の関係性がある。関係性はそれ自体がその閉鎖系であるはずだ。でないと関係性といった連続性をもつことがない。関わり合うこととは相互にその束縛にある。結束的であることが関係性の意味するところではないか。関係しないのであれば、そこには一切の束縛はない。同一の地平にあっても、関わり合いがゼロなら、そこには一切の束縛的な力は働かない。関係性ゼロ。それは存在する。関係性といった現象が実在する限り、そのあり方としてのゼロはある。関係性ゼロの意味するところとは厳密に何か。数字はそれが実在するうえで数としてまったく数え上げることのできない現象の実在についてそれをゼロとする。同様に、関係性はそれが確かに存在するが、その存在する関係性が実在する存在の地平において、その関係性がいっさい見当たらない現象が仮に確実に実在するなら、それは関係性ゼロする。数直線があり、そこに数がある。しかし、物事とは、それがあるから語り始められると考えられ、それがあるからこそ数はそのゼロをもったのであり、関係性もまたそれが現象としてあるから、そのゼロが語られる。まず先にある現象に依存して、その現象がいっさい見当たらない地点がどこかにあるとき、それはゼロとして、認識される。あるか、ないか。それは、そこに花が咲いているか、いないかである。花が咲くことがあるから、花が咲いてないと認識する。関係性があるから、関係性のゼロが認識される。