関係性の喪失。いっさい何とも関わりを持つことなく実在する何かは実在しない。何かはつねに何かとの関わりの上にある。ではなぜ、何かがそれだけであると考えるのか。それは私たちが認識しようとするからではないか。認識しようとすることで何かしらにフォーカスをあてる。フォーカスされた何かはさしあたり、それ自体と考えることになる。しかし、それ自体がそれ自体のみで成り立っているのではない。それ自体はそれ以外を含む。それ自体はそれ自体であるために、それ自体であることと全く同時にそれ自体でない。それ自体であり、かつ、それ自体でない何かとは、その素性としては何か。
存在とはその素性を私たちに見せてくれることがあるのか。素性を見出すことができるのか。存在の素性とはその複雑な関係性ではないか。関係性それ自体により紡がれるのがそれ自体であり、それ自体ではない何かではないか。関係性が紡ぎ出す何かを私たちは認識しようとしているのではないか。
存在それ自体は何かとしてある以前に、私たちの認識を超えた関係性を紡いでいるのではないか。紡がれる関係性がそれ自体を構成している。それ自体とは紡ぎ出される関係性によってできあがっている。