その223

 運動の流れをそのまま完全に捉えた数値には、その間隙があってはならない。隙間なく埋め尽くされた数は存在するとは考えられない。ある数からある数へと移行するときに、その間には数に置き換え不可能な何かがあるのではないか。具体的な数にならない何かがあることで、数はそれ自体として実在する可能性がある。数は数だけからできているのではないのではないか。数を実在させているのは、数でもあるが数でもないのではないか。一個のりんごの運動のすべてが完全な数値に置き換えることができないとき、一個のりんごのいかなるかをどのように把握すればいいのか。その水分を検討するとき、水分量の増減に関して、その数値はつねに限界にある。ごく僅かにでも表現しきれない部分があるはずだ。切り捨てざるを得ない数値の実在をもとに、明白な数値があるはずだ。明白な数値は不完全である。

 数が隙間なく存在すれば、数は動かない。数が動くのは存在が動いているからではないが、存在が動いているのだから、それを捉えた数は動かないといけないが、隙間が一切ないとき、数は動かないのではないか。数が動く為には数の存在のどこかに余白がなければならない。数の総体は実在しない。つねに未知がある。未知を抱え込んだ数のどこかに余白がある。隙間がある。