その612

 あらゆる事実は信仰とともにある。われわれに信仰的な態度があることで、この世界には事実がある。事実とは、言葉によって示される。放たれた言葉はそれ自体が事実を示す場合と、事実を示さない場合がある。むろん、事実を示す言葉は世界中の誰にとっても事実であるわけではない。誰かにとっての事実は誰かにとっての事実ではない。言葉の示すことはなので、事実であり、事実ではない。ある言葉について、信仰する人々と信仰しない人々がいる。