その574

 何かが具体的にあるためには、何らかの姿になければならない。何らかの姿にあるためには、何らかの構造を持つしかないのではないか。姿だけあって構造を持たない何か。かりにそのような物があれば、一瞬一瞬でその姿は異なっている。それはりんごがりんごとしての姿にあることではない。何かとしてあるが、次の瞬間には別の姿にある。連続的に創造されているといった世界の描像があるが、そのことかもしれない。いっしゅんいっしゅん姿を変えていく世界にりんごは一瞬しかないが、実際にはりんごはそのりんごの姿のまま、あり続ける。そうではなく、一瞬だけある姿をとって、次の瞬間には別の何かとなる、そのような現象がありえるのか。確認されたことはないが、目に見えない粒子の姿がそのような現象を繰り返している可能性はわずかであっても完全には否定しきれない。反復を繰り返す世界はそれでもすべての瞬間は一度しかない。しかし、あるりんごは何度も繰り返しそのりんごである。一瞬あった世界が別世界になることはない。一瞬あった世界と次の瞬間にある世界はつながっている。