その587

 無限拡散しているだけの世界であれば、何一つとして具体はない。拡散はしていても、この世界に具体があるその訳は、この世界にあまねく閉ざす力が働いているからだ。そうでなければ、生じた一点はひたすらに拡張していく。ひたすらに拡張することなく、何かが具体的に実在することは、この世界の安定を意味する。安定しているがゆえにりんごがりんごの形をして一定期間実在する。世界に安定をもたらしている閉鎖力はなぜゆえに実在するのか。無限拡散こそが自然かもしれない。いや、自然拡散の自然を押し留める力の自然がせめぎあっているのが自然である。増えようとしつつも減ろうとする。それが自然ではないか。無限拡散する増えようとする力とまったく同時に、無限拡散を押し留め、無限拡散を閉ざそうとする力があることで、世界には秩序があるのではないか。世界に秩序があることの意味とは、世界に順序があることを意味する。すべての時間が異なっているのなら、起こっていることのすべてが異なった時間列を示している。マイクロオーダーがある。世界を細かくみていけば、ミクロの世界において起こっていることに順序がある。