その581

 πには始まりがあって、終わりがない。始まりがあるπとはいかなる実在か。無限とは、その終わりについて述べるだけではない。始まりがあっては、無限ではないのではないか。際限がないものに際限である始まりがあっては、都合が悪い。始まりもなければ終わりもない。それでこその無限ではないか。無限大とは無限に大きいことであるなら、無限小は無限に小さいこと。無限に小さい状況とは限りなくゼロに近いことを意味するが、πに始まりがあるとき、πの無限の意味は無限大のことで、無限小は含まない。πが無限の実在だとしても、それは数が増えゆくプロセスにおける無限大であって、数が縮小していくプロセスにおける無限小ではないのは言うまでもない。

 無限とは単に動きが止まらないことを意味するのではないか。際限なく動き続けることは無限を示す。何かが際限なく動き続けるためには世界が永遠でなければならない。世界が永遠かどうかは誰も知らない。存在する何であっても永遠を経験することはない。時間であっても永遠を経験できない。それは永遠に世界があるかどうか時間であっても判明しないからだ。終わりのない時の流れを永遠と呼ぶとき、ほんとうに終わりがないのであれば、時間は永遠を経験できるが、時間が経験できる永遠はどこにもない。