その561

 何かがなくなった瞬間を有の側が所有しているとする。何かの完全消滅は、その痕跡を有の側が所有するとしたとき、いや、あらゆる消滅はその痕跡となり有の側にあるなら、この世界に完全消滅は一切実在しないことになる。世界のすべてはその痕跡の上に現れているのか。存在した何かが無となったことなど、一度でもあったろうか。痕跡がごくわずかでも残っていれば、それは無ではない。あったもののいずれかがその痕跡を一切残すことなく、この世界から完全消滅したことなど、あったろうか。

 あるものは永遠にあるのだろうか。その姿が移り変わってもゼロとはならない。ゼロとならない限り、それはある。0.00000・・・1.のうちでゼロがどれほど多くあっても、あるものはあって、ないものはない。