その563

 小数点以下、無限にゼロが続いていったとき、つまり、0.000000…に終わりがなく、ただひたすらゼロが続いていくとき、それは何も示されていないことを意味するのか。いや、ゼロが続いて増えていくことの意味とは、何かが深層で動いていることを意味する。数がすべてを表すわけではない。数によっても明らかとはならない何かがある。つまるところ、ロゴスによって表出しきれない何かが明らかにある。認識を促進する物質としては不在だが、この世界の動因として実在する何か。それが私たちの認識上に明白にあがってこないとしてもある。そのとき、この世界の礎として、0.000000…の果てしない増加、いや、運動。増加ばかりではない、減衰もありえる。増えては減り、減っては増えている。ただ完全にゼロにはならない。小数点以下にゼロが連なっていくことの意味が存在がわずかにでもあって、蠢いている。そんなことを0.0000…は示さないか。厳密には、表現が誤っている。0.0…と示すべきだ。ゼロがどれほどあるか、増減を繰り返し、完全なゼロにならないか。それを示すのが0.0…だ。

 小数点以下は、現実の何を表しているのか。たとえば、1.2は、1と比べて、0.2ほど多いことを意味する。では、0.0は、ゼロと比べて、ゼロだけ多いことを意味する。それだと完全にナンセンスで、ゼロと比べてゼロだけ多い数はゼロだ。しかし、ゼロだけのゼロと比べて、0.0は、それははっきりと現れていないが、私たちにとって深層的に何かとしてあることを意味する。完全なるゼロ(=無)に加えて、深層的実在として、小数点以下にゼロが続いていく。続いていくゼロの個数に意味がある。一個一個、個別具体的な深層的実質あることを示す。現実には深層的なことが個別に一個一個あるかどうかは定かではないが、たんに私たちの持つ道具である数がそのようになっている。