その530

 私たちにとっての現実はつねに理性界のフィルターを通過したのちにある。純粋直感がそのまま現実となることはない。かりに純粋直感がそのまま現実であったとしても、それは理性界で精査された結果、現実となる。私たちの現実は、現実かどうか精査された結果において現実になるのであって、それゆえに、何かを思うという行為は妄想の域を脱することがない。思い、精査し、現実になるかどうか。そういったシステムが私たちの現実にある。そういったシステムのうちにあることから逃れられない現実を生きているのが私たちだ。