その509

 ものと言葉は、その関係を結んでいる部分はある。言葉の影響でものへの影響があるからだ。ものの側からの影響もまた言葉の側にある。この意味で、ものと言葉は関係している。しかし、言葉の中をどれほど探しても、ものは出てこない。言葉のなかにものはない。言葉といったもののなかに、言葉以外のものはない。この意味で、言葉とものは一切の関係を持たない。言葉があり、ものがある。それは、精神と身体が分離していることを意味することと同じ意味を持たないか。精神により生み出される言葉は、物質である身体とかけ離れている。精神があり、言葉があり、身体があり、物質がある。相互作用はあるが、それでもなぜか、言葉と物質はかけ離れている。精神と身体はかけ離れている。言葉や身体といった現象がそれだけで実在しようとする瞬間がこの時空間にあるのではないか。その時に限って、言葉は言葉であり、精神であり、身体は身体であり、物質である。