その445

 知っている。だから、生きていることができる。何も知らないような赤子でもその身体は何かしらを知っているから、生きていられる。もし、生まれたばかりの赤子が知らないことしかなかったら、即刻死んでしまう。知っていることがいくつもあるから、生きている。生きていけている。

 知っていることの意味は深い。知っていないようなことでも知っている。知っていることだけを知っている。知らないようなことも知っているとき、知っていることの定義は容易ではない。知っていることの定義は不可能ではないか。どういうことを知っていて、知っていないのか。言葉になっていないことも知っているとき、たとえば、それがそのように存在するために必要なことを知っている。そういうことができても、その限りではない。知っていることは認識を超えている。つまり、認識といった定義を超えたことを知っているのではないか。いや、認識通りかもしれないし、認識を超えたことを知っているのかもしれない。何を知っていて、知っていないのか。それは時々でわからない。知っていることも知っているうちに入らないかもしれないし、知っていないことも知っているかもしれない。