その356

 複雑なのは、その対象が複雑なのではなくて、理解しようとする側に要因がある。複雑にしか理解できないことから、その対象が複雑なのである。世界にはさまざまな認識主体があり、それぞれが認識機能を独自に持っている。その機能により認識を行うことで、そこに複雑さが発生する。実際にそれが複雑なのかどいうかは定かではない。複雑にしか認識できないから複雑なのであり、別の主体からすれば複雑ではない可能性があることを考えても、複雑さはある認識主体が生み出すあり方であり、もっとも、そうした複雑さが世界内にあることは間違いのないことだが、その複雑さが普遍かどうか、それは定かではない。ある対象がどの認識主体からしても複雑であるなら、そこには絶対複雑性なるものがあるのかもしれないが、それはあまたある認識主体のあり方を分析することで明らかになる。絶対複雑性は実際にあるのかどうか。