その106

 認識としての関係性は実在する。個々の存在がいかに関わり合っているかについて私たちは知ろうとする。知ろうとすることで生じる関係性は、存在そのものはその関係性を超えた実質の可能性を孕んでいる。私たちの認識する関係性以上の実質とは、存在のありのままの姿であるが、いかに関係し合っているかとの関わりなく、存在のいかなるかのすべてがすべて明るみにでている。いかなる状況にあるのか、それは明確に認識され得ないが、実質として、あるようにしてある。関係性といったときに、関係し合っているばかりではなく、関係していないことの実在もあるはずだ。関係性とはいかなる関係にあるかであり、関わっている状況ばかりが関係性ではない。無関係であることも関係性のうちに含まれる。無関係であることとは、一元的な実在を措定したとき、存在を截然と区分けし、相互に触れ得ることのない距離がそこにはある。隔たった距離が永遠に埋まらないとき、存在は一元的にあるのではない。個別の領域の寄せ集めが存在界をかたち作っているのであれば、私たちの感覚から生じる存在のあり様には間違いがある。私たちの認識を超えた存在のありようは永遠に認識されないのではないか。私たちは私たちに知り得る領域のみを知っているのではないか。