その13

 存在そのものが一切の疑いを持たない状況でありのままある。そのことは事実であり、いかなる事実もフィシスである。私たちの営みがイメージ的であることも含め、存在のあらゆる状況がフィシスである。物とは距離を隔てたところに浮かんだイメージがある。もとになった物からすると二次的な事実も私たちの実存を介してのことであり、私たちが存在する限り起こる現象であり、そのことそれ自体である。

 物があるばかりではなく、事がある。事が集まったのが物ではないか。物にならない事がある。事のまま物ではない。やがて物になるかもしれないが、物になった事はそれ以前の事とは違う。起こった事はすでに他の事になっている。物ではない事がいかにあるか。私たちの把握する事とはまず、言葉である。あらゆる言葉は事である。