その585

 思考可能性と現実は完全な相関にはない。現実はまず先に、起こっていることが作り出している世界の総体であり、起こっていることのうちに我々の思考があり、その思考によって現実以上の何かを現実と捉えようとすることがある。我々の思考がなく、他にも思考する主体が存在しないとき、世界には可能性がなくなるのではないか。そこでは純粋に起こることが起こっているだけだ。思考される世界は可能性に満ちていて、不純だ。ほんらい起こり得ないことまでも思考によって考えられ、そうした思考の痕跡が現実の一部となる。世界は、さまざまな思考主体によって考え出される可能性によって不純にある。我々がいる世界は本来は純粋だが、我々の思考によって不純となっている。