見えずとも確かにその全体はある。何であっても、その全体がある。すべては個別に具体的なその全体としてある。実在の具体性はどの次元で捉えるかで異なる。ミクロにおける具体性はメッゾにおける具体性、たとえば、それを構成する微粒子の具体性の集積としてのりんごの具体性は、微粒子のいかなるかがりんごのいかなるかに関わってはいるが、それがりんごである以上、それがりんごであるためにそのりんごの持つ何らかの力がある。りんごがりんごであり得るためにはその結実のための力が必要となる。存在の流れのうちでなぜか一個のりんごはその結束にある。無限拡散する力に抗って、秩序を示しているのがたとえばりんごだ。
この世界には秩序部分と混沌層があるのではないか。りんごがあり、その周囲には混沌層がある。いや、それはほんとうだろうか。混沌層の実在が確かなら、りんごがりんごであることが常に可能とならないのではないか。混沌とした層に含まれて秩序としてのりんごあるならば、層が混沌としているが故に、とたんにりんごが消滅することがありえる。りんごが忽然と消えることはない。それ故にりんごの周囲は混沌としてないのかもしれない。一定のリズムに世界はあるのか。それ故に世界は移ろえど、豹変はしない。反復にある。
