その19

 りんごの内部だけがりごではない。りんごの内部でさえ、その全体性に到達不可能な私たちの認識は、りんごとどういった関係にあるか。りんご単体の表面から外もりんごとの関わりにある。りんごの全体とはその実存性のことであり、その外観ではない。存在して初めてそれがりんごであることができる。刻一刻と移ろう時間のなかでりんごが生存できる地点とそうでない地点がある。りんごとはその環境により生み出されたものである。りんごがりんごになるためにあったのはりんごの根源的な環境ではないか。根源的に存在できる環境があった。りんごがあるというよりか、りんごの生存のための環境がまず先にあった。環境が整ったところに芽吹きがあったのではないか。初めからあったものなどない。始まりの前がある。りんごの始まりのもとになった環境は何で、いかなることの集まりだったか。