世界の運動のうちで認識が安定しないのに加え、世界の運動のうちで物質的に個体が安定しないのがある。個体のどの瞬間を取り出しても、その固定にはない。固定点を持たない物質は、その流れにある。流れは流れているのであり、変化にある。変化し続ける個体は、その実態として、いつ、どこに、あるのだろうか。
いま目の前にあるりんごは一体、どこ、にあるのだろうか。りんごをずっと手で触れているとき、触れているりんごは、いつ、のりんごなのだろうか。りんごと手はまさしく接触し、接触している間中、その時間の経過にある。接触しているその状況それ自体の変化が時の流れを示している。変化にあるりんごと手の接触部分は、いつの話なのかとなった時、ある特定の時刻から、ある特定の時刻までの間における時刻経過の話となるのか。つまり、個体のように時刻もその領域が設定されているのか。その領域とは一瞬のことか。一瞬とは何か。一瞬には始まりがあって、終わりがあるのか。