その339

 非現実的なことであっても、可能性としてはゼロではないことがある。想像力を抱けば、なんだってありに思えなくもない。突然世界が変わる。そんなことが起こり得ないと決定づける根拠はない。そのとき、妄想は妄想でなくなる可能性がある。

 ある可能性があるとき、その可能性は現実の一部を構成するが、実際にそれが起こるかどうかは定かではない。起こったことから明らかになっていく。起こる可能性があることはいまだ起こっていないが起こるかもしれない。起こるかもしれないことのうちで何かが起これば、その起こったことに関連して何かが起こらない。何かが起こると同時に何かが消滅したと考えられる。起こるべきことがあった。起こったことがあったので、起こるべきことが起こらなかった。つまり、現れた世界の背後には消え去った何かが潜んでいる。潜んでいるかもしれないが、それは実在しない。ほんとうに実在しないかどうか、それは確認できない。確認できないものがないわけではない。確認できないが存在するものがある可能性はある。可能性だけがあって、実際にはどうか、永遠にわからないことがあるのかもしれない。知りうる領域を拡大していった先にある完全性とは何か。完全な認識とは何か。