その324

 起こっていることのすべてを知ることは到底できない。何かが起こっているのか、その全容がまず分からない。有限の全体はあるのだろうが、それがどこまでの広がりにあるのか、まるで分からないのだから、起こっていることのすべてを知ることができるはずもない。

 ただそれでも、起こっていることが起こっているなかにいる。起こっていることがあるから生きていられるのは事実の側面がある。一方で、起こっていないことがあることで生きていられもする。起こることばかりではなく、起こらないことも、何かが存在するためには必要な現象なのではないか。

 起こることがあって、起こらないことがある世界とは、閉鎖系と捉えられないか。閉ざされた世界にいるのではないか。可能性として考えられることのいくつもが起こらない。起こることだけが起こっている世界とは閉鎖系ではないか。