その314

 Aは存在しない。Aだけが存在することがないからだ。Aの実在について、可能にしていることがAにあり、かつ、その関わりXにある。動的なXは存在のすべてではない。Aの関係項であるXは Aを含む。AがあるからXがあるのか。XがあるからAがあるのか。いや、Aを生み出す領域がやがてはAを生み出したのだろうが、Aを生み出すと同時にXを生み出した。AもXもなかったときにあった何か、それがついにAとXを生み出したと考えたとき、まず先にあったのはAを生み出すための動因であったXではないか。Xではない何かがあって、それがAの原因であるXを生み出し、XがついにAを生んだ。そして、Aも含んだ何かが何かを生み出す領域となり、どこにもなかった何かを生む。そんな構造ではないか。Aは他の何かが存在するための原因である。それはすべての存在に当てはまる。何かがあることはそれ自体の実在の証だが、それ自体は他の何かのために実在するといった意味をもつ。何かが実在し、その関係にある何もかもがある領域にあるとき、その領域は他の存在の領域を含む。つまり、存在の流れのうちにある、何かが存在するために関係のある領域は複合的である。存在の一切において実在する何かに焦点を絞って、その関係する領域を捉えたとき、その領域は他を廃除することなく、他の何かの原因となっている。つまり、ある存在の原因が他の存在の原因でもある。それ自体ではなく、それ自体が実在するための原因を考えたとき、一個の原因がいくつもの実在の原因になっている。テーブルの上に一個のりんごがあることが他の何かの原因になっているが、それはまた他の何かの原因であり、それがどれほどの個別具体的に関与しているか、分かったものではないのではないか。