その289

 認識外にも現実がある。完全に知らないことがいくらでもある。何を知っていないかをまるっきし知らない。あることについて知らないのではない。一度たりとも意識にのぼったことのないことが現実として存在している。理解したか、していないか以前の話である。疑問に思ったこともなければ、それについて考えたこともなかったことが現実として実在している。では、そうした現実と関係がないのか。関係はある可能性がある。関係のあることでも意識したことがないことがいくらでもある。それがあったから生きてこれたことでも、そのことについて知らない場合がある。知らないから関係がないというのではない。一度たりとも認識したことのないことと係りにあった上で生きていることとは何を意味するか。