その271

 どこにもない何か。それが可能性として考えられたとき、頭の中にそれはある。頭のなかにある状況において、それが外部化されないことがある。言葉にならずとも、考えられた痕跡が頭のなかにある可能性がある。はっきりとしないが、あるかもしれないものがある。可能性について考慮しなければ、存在のあり様の全貌は掴めない。それが言葉になっていなくとも、ある可能性があることがある。あればそれはあるのだから、いかにあろうとそれは関係ない。あることの模索を続けていくことで、やがては絶対にないことが発見されるのだろうか。そのなさとは可能性ゼロのことである。可能性として考えられることが無限にある限り、何かが絶対にないとは言い難い。存在とは存在がどこまでいかに広がっているかを知ったうえでないと、あるなしについて判断することはできない。わからないが先にある。わからないがあるかもしれない。すべてにおいて、それが現にいま確認されていなくても、わからないがあるかもしれないのではないか。