その266

 何かがある。それは単一にあることはできない。単一にあるものがあるはずがない。単一であるとき、それはそれ以上動こうとしない。動く何かはその複合にある。それだけがあるのではなく、それがあるためにはその他がある。その他とそれがある。それゆえに、それがあることはその他と複合的にある。存在とはその地平に広がる何かである。存在の地平においてあるものはそれが何であっても、その周囲がある。周囲との関連のうちにある何かは何かであり得ているのであり、何かであることだけがそれ自体であることを決定づけているのではない。何かはそれ自体であることを決定づける要因ではあるが、その存在のためにはその周囲が、それ自体がそのようにあることと同一の瞬間において、その決定をもつのではないか。それ自体とそれ自体の周囲は同一の瞬間にそれ自体を決定づけているのではないか。