その207

 規定された領域がりんごである。存在の流れの中にあるりんごは存在を規定した存在である。りんごのみならず、それが個物である限り、存在の流れのうちで、なんらかの力を加えて規定した結実として実在する。なぜ規定可能だったのか。りんごはそのうちなる力が働いて存在を規定したのか。存在の流れの中から生じた力によりりんごは規定されたのか。在るのはまず先に存在の流れであり、仮のそれが一切きてされていない状況であるとするとき、原初の個物はいかに生じたのか。一切の規定がなかった存在の流れのなかに生じた原初の個物は存在の流れのなかにあった力がもとになって生じたと考えるなら、それ以降の個物もまたその内的な動因は否定される。つまり、個物はその外部に依存した結果、生じていく。その連鎖がある。りんごからりんごへ受け継がれていくのか。りんごのみならず、雨が降るのもまた雨そのものに原因がある以前に、雨の外部に雨にとっての原初的な原因があるのではないか。原初の個物が存在の流れの中から生じたように、雨もまた存在の流れのなかから生じた力により規定された結果、雨となったのではないか。雨の原因は雨にもあるが、それは始まりではない。