その67

   私たちにとっての情報が、私たちの認知しているものに限っての情報という意味でなら、正鵠を射ているが、情報とは私たちの認知する領域以上の広がりを持っている。情報があるから存在がある。存在する何もが情報であり、私たちが知っていることだけが情報ではない。私たちはその実存において、情報化された姿であり、情報により生み出された結果、生きていることができている。情報の変容が誕生であり、死である。

  情報により紡がれている存在のいかなるかは、私たちの所有する情報のみにより明らかになるのではない。私たちの所有する情報は私たちに知られていない情報を契機として生み出されている可能性をもつ。情報の連鎖が存在の運動であり、存在の運動は情報の移ろいであり、一瞬たりとも止まることはない。止まることのないはずの情報だが、りんごが一個テーブルのうえにあることは、情報として止まっていると考えられる。一個あるりんごは変容しているが一個という個数は絶対停止している。個数とは何か。個物はその関連における中間領域における存在であるが、そのあり様における個数性を把握するとき、私たちとの関連においても、その個数は絶対性をはらむ。一個なら一個、二個なら二個で、絶対数が実際上、存在としてある。不動の個数は何を意味するか。たえらず変容にあるのが存在の姿であるはずだが、変容しない状況が一定時間つづくとき、その意味は何か。