その53

   りんごはその絶対規定により実在している。りんごとはその絶対基底そのものである。実在するために必要な要素が絶対的な基底そのものとしてある。流転するりんごが一個の現象体として実在するとき、絶対的な基底がなされることでりんごはりんごであることができる。りんごとはりんごの姿であるあいだにある単一の規定を持つ絶対性である。

   存在する何かがりんごであるとき、存在のうちのある部分がりんごなのである。りんごである部分はりんごでない部分を含む。りんごの内部はりんごの外部をその絶対基底と含むが、りんごの絶対基底であるりんごの外部は、りんごではない何かとの共有的実在である。りんごの絶対基底であるりんごの外部の共有的実在は、さまざまな絶対基底に共有された実在である。りんごの内部もまたりんご以外の実在により絶対基底として共有された実在である。

   りんごがりんごであるために必要な絶対基底がりんごの領域であるが、りんごの実在のための絶対規定は、他の実在のための絶対基底でもある。りんごがりんごであるための絶対基底がバナナの絶対基底でもあるとき、りんごの領域とバナナの領域は共有される部分をもつ。りんごとバナナの内部は同時にレモンの領域である可能性がある。レモンであるためにリンゴとバナナの内部をレモンの外部に絶対規定として抱え込んでいる可能性がある。