その35

 りんごの存在は概略系を示す。変動するりんごは崩れて、りんごではない状況にはない。りんごがレモンではないのは、りんごが概略系だからだ。概略系の存在は、存在を個別化する。何かがあれば世界は存在するが、個別化した何かの存在は概略系の存在を明らかにする。系はある。概略的に存在する枠組みがそれ自体として成立するのは、それ自体の内奥に端を発しているのか、概略系の外部からの力により概略を与えられているのか。そのいずれでもあるとき、内側と外側のあいだにあるのが概略系である。概略化された実在が概略系であるが、概略化されたのは内なる系が外側から押し出されたようにして実在すると考えられる。まずは内側にある存在のいかなるかが鍵を握る。内側にある系の元から噴き出すように概略系を形作っていくのは、系の外部の要因が内部と反応するからではないか。概略化されていくことで生じる系のもつ結果は反応の仕方による。いかなる運動をするかで概略系の姿が決まっていく。毎刻の変化それ自体が系の内部で繰り広げられるとしても、系の内部は純粋ではない。系の内部はまったく同一の時刻に系の外部を取り込んでいる。